7月下旬から8月上旬にかけて、3月期決算企業の第1四半期(Q1)決算が一斉に発表されます。前回は「決算で株価が動く仕組み」を解説しましたが、今回はその実践編。Q1決算ならではの読み方を、発表ラッシュ前に整理しておきましょう。
Q1決算の3つの特徴
① 通期予想は基本「据え置き」
まだ3ヶ月しか経っていないので、多くの会社は通期の業績予想を修正しません。だからQ1で通期予想の修正(特に上方修正)が出たら、それはよほど事業環境が良い(悪い)というシグナルです。
② 開示はコンパクト
本決算に比べて説明資料も少なく、市場が判断に使える材料が限られます。
③ だからこそ市場は「進捗率」で評価する
材料が少ないぶん、通期予想に対してどこまで進んだかという単純な物差しが株価を動かします。
私自身、決算短信を「作る側」にいた実感として、Q1での業績予想の修正はできれば避けたいものでした。わずか3ヶ月前の期末に出した予想を「読み違えていました」と自ら認めるような空気感があるからです。だからこそ、それでもQ1で修正を出す会社は、よほどのことが起きている——このシグナルの強さは、作る側の心理を知ると腹落ちするはずです。
進捗率の見方 — 「25%」を基準に、季節性で補正する
進捗率 = Q1実績 ÷ 通期予想。1年の4分の1が終わったのだから、単純計算なら25%が標準です。
- 進捗率30%超 → 順調。上方修正への期待が株価を支える
- 進捗率20%未満 → 黄色信号。ただし慌てる前に「季節性」を確認
ここで大事なのが業種の季節性です。例えば建設業は工事の完成が下期に集中するためQ1進捗率は低くて普通。逆に上期に稼ぐ業種もあります。「今年のQ1進捗率」だけでなく「例年のQ1進捗率」と比べるのが正しい使い方です。過去の四半期実績は決算短信や有価証券報告書で確認できます。
Q1で株価が動く典型パターン
- 進捗率が異常に高い → 「上方修正が近い」と市場が先回りして買う
- 早くも業績予想の修正が出る → 実績以上のインパクト(前回で触れたフジクラの例のように、修正は強いシグナルになります)
- 進捗率は良いのに株価が下がる → 織り込み済み・材料出尽くし(これも前回の復習ですね)
Q1決算チェックの3ステップ
- 進捗率を見る(通期予想比。例年の同時期と比べて高いか低いか)
- 前年同期比の営業利益を見る(会社の実力は営業利益に出る、はQ1でも同じ)
- 中身を見る(一時要因はないか、会社が説明する増減理由は納得できるか)
ひとつ、経理経験者ならではの”勘繰り”も書いておきます。進捗率が明らかに良いのに、いつまでも上方修正をしない会社——私はそこに「まだ表に出ていない何か」を疑います。大きな減損や引当、訴訟リスクといった、利益を押し下げる要因を会社が織り込んでいる可能性があるからです。修正しないこと自体が情報、という見方です。
8月、このブログでも実践します
当ブログでは8月の発表シーズンに、注目企業のQ1決算をこの物差しで実際に読むレビュー記事を予定しています。今回の3ステップを頭に入れて、ご自身の気になる銘柄の決算短信をぜひ開いてみてください。
まとめ
- Q1は「通期予想据え置きが基本」。だからこそ修正が出たら強いシグナル
- 進捗率25%を基準に、例年の季節性で補正して見る
- 見るべきは進捗率 → 前年同期比の営業利益 → 中身、の3ステップ
※ 当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。


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