前回の記事で、個人投資家が見るべき決算書は3枚だけとお伝えしました。今回はその1枚目、損益計算書(PL)を掘り下げます。
損益計算書には利益が5つも登場します。「どれを見ればいいの?」と迷った経験がある方も多いはず。経理歴17年の結論を先に言うと、最優先は営業利益です。その理由を、5つの利益の違いから説明します。
損益計算書は「利益の階段」でできている
| 段階 | 利益の名前 | 何を引いた後? |
|---|---|---|
| 1 | 売上総利益(粗利) | 売上原価を引いた後 |
| 2 | 営業利益 | 人件費・広告費など販管費を引いた後 |
| 3 | 経常利益 | 利息や為替など本業以外の損益を加減した後 |
| 4 | 税引前当期純利益 | 一時的な特別損益を加減した後 |
| 5 | 当期純利益 | 税金を引いた後 |
ポイントは、下の段階に行くほど「本業と関係ない要素」が混ざっていくことです。
なぜ営業利益が最優先なのか
営業利益は「本業でどれだけ稼いだか」を示す、いわば会社の実力値です。
- 経常利益には、為替差損益や受取利息など本業と無関係の損益が入る
- 純利益には、土地売却益やリストラ費用など「今年限り」の特別損益が入る
- つまり、純利益は良くも悪くも“化粧”ができてしまう
私は、営業利益(と営業利益率)こそ、その会社の競争力・競争優位を真に表す指標だと考えています。値引きしないと売れない会社は粗利が削られ、効率の悪い会社は販管費がかさむ。競争力の差は、最終的に営業利益に集約されて表れるからです。
「純利益だけ見る」と何を間違えるか
例えば「純利益が前年比2倍!」という会社。すごく見えますが、中身が工場売却益なら来年は消えます。逆に「純利益は赤字」でも、原因が一時的な減損で、本業の営業利益が伸びていれば悲観する場面ではないかもしれません。
見出しの数字(純利益)ではなく、営業利益と、その増減の理由を見る。これだけで決算ニュースの読み方が変わります。
「利益率」と「利益成長率」という2つの物差し
金額だけでなく、営業利益率(営業利益÷売上高)も見てください。
- 目安: 10%を超えていれば収益力が高い(業種差が大きい点に注意)
- 同業他社と比べると「その会社の強さ」が見える
- 過去3年で利益率が上がっているか下がっているかはさらに重要
そして私自身は、利益率とあわせて利益成長率を重視しています。上場企業は期末の業績予想を開示しているので、今期どれだけ利益が伸びる見込みか、その進捗はどうかが分かります。株価は将来を織り込んで動くため、いまの利益水準だけでなく「成長の角度」が大切だからです。
例えば薄利多売の小売業は、一般的に利益率が低い業種です。しかしユニクロ(ファーストリテイリング)や良品計画のように、生産・企画・ブランドを一体で組み合わせて独自の競争力を生み出し、小売の常識を超える利益率を実現する会社もあります。「業種の平均」と「その会社」のギャップにこそ、分析の面白さがあるのです。
チェックリスト
- 営業利益は黒字か、3年トレンドで増えているか
- 純利益が大きく動いている年は、特別損益の中身を確認したか
- 営業利益率は同業他社と比べてどうか、成長の角度はどうか
まとめ
- 損益計算書は利益の階段。下に行くほど本業以外の要素が混ざる
- 会社の実力と競争力は営業利益に表れる。純利益は“化粧”ができる
- 営業利益率と利益成長率の2つの物差しで、強い会社が見えてくる
次回は2枚目、財務三表のうち貸借対照表(BS)で「危ない会社を見抜く」方法を解説します。
※ 当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。


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