決算書は3枚だけ見ればいい|経理歴17年が教える最初の読み方

決算書の読み方

「投資を始めたけれど、決算書はなんだか難しそうで読んでいない」——そんな方は多いのではないでしょうか。

SNSやYouTubeのおすすめ銘柄をそのまま買って、株価が下がると不安になって売ってしまう。それは、自分で会社の良し悪しを判断する物差しを持っていないからです。

申し遅れました。当ブログを運営しているMoiと申します。経理の仕事に17年携わり、上場企業の決算作成や海外事業、中小企業の経営に関わってきました。いわば「決算書を作る側」にいた人間です。

その経験から最初にお伝えしたいのは、個人投資家が見るべき決算書は、たった3枚だけということです。しかも、各1〜2カ所だけ見れば、危ない会社はかなりの精度で避けられます。

私自身、決算書が読めるようになって変わったのは、個別の銘柄選びだけではありません。好調な企業や業界の決算をたどっていくと、「いま何が流行っているのか」「これから何がブームになりそうか」が数字から見えてきます。決算書は、時代を先読みするための情報源でもあるのです。

決算書の全体像 — 「財務三表」という3枚のカード

決算書(正確には財務諸表)にはいろいろな書類が含まれますが、核になるのは次の3枚です。

書類 通称 例えるなら 分かること
損益計算書 PL 1年間の成績表 儲かっているか
貸借対照表 BS 健康診断書 つぶれにくいか
キャッシュフロー計算書 CF お金の家計簿 現金が回っているか

この3枚は「財務三表」と呼ばれ、上場企業なら必ず公開しています。1枚ずつ、どこを見ればいいかを説明します。

1枚目: 損益計算書(PL)— まず「営業利益」を見る

損益計算書は、1年間(または四半期)の「稼ぎの成績表」です。売上からいろいろな費用を引いていって、最後に利益が残る構造になっています。

初心者の方が最初に見るべき数字はただ1つ、営業利益です。

  • 営業利益 = 本業で稼いだ利益
  • 最終利益(純利益)は、資産売却などの一時的な要因で大きく動くことがある
  • 本業が強いかどうかは営業利益にしか出ない

チェックポイント:

  • 営業利益は黒字か
  • 過去3年で増えているか、減っているか

ここで、経理の現場にいた人間だからこそお伝えできることをひとつ。上場企業は業績予想を開示しています。そのため「このままでは予想より利益が出すぎる」という年には、将来発生する修繕費を前倒しで計上するなどして、あえて利益を圧縮する——そんな「利益調整」が実務では行われることがあります。

つまり、単年の利益は会社の意図である程度コントロールされ得る数字なのです。だからこそ、1年分の数字だけで判断せず、3年程度のトレンドで見ることをおすすめします。

2枚目: 貸借対照表(BS)— 「自己資本比率」で体力を測る

貸借対照表は、決算日時点で会社が持っている財産と借金の一覧、つまり「健康診断書」です。

最初に見るのは自己資本比率(純資産 ÷ 総資産)だけで構いません。

  • 自己資本比率が高い = 借金に頼らず経営できている = 不況に耐える体力がある
  • 目安: 40%以上なら安心感あり、10%を切ると要警戒(業種により差があります)

チェックポイント:

  • 自己資本比率は何%か
  • 前年より上がっているか、下がっているか

なお、「借金が多い会社=ダメな会社」と単純に考えるのは早計です。中小企業の経営に関わって実感したことですが、借入は目的によって意味がまったく違います。たとえば、売上の入金と仕入・給料の支払いのタイミングのズレ(収支ズレ)を埋めるための運転資金の借入は、健全な経営でもごく普通に必要になるものです。

見るべきは借入の「多さ」そのものよりも、何のための借入か、そして返せる収益力があるかです。自己資本比率はその入口として使ってください。

3枚目: キャッシュフロー計算書(CF)— 一番嘘をつけない書類

キャッシュフロー計算書は、1年間の「現金の出入り」を記録した家計簿です。

実は、利益は会計のルール次第である程度「作れて」しまいます。しかし現金の動きだけはごまかせません。だから経理経験者ほどCFを重視します。

見るのは営業キャッシュフロー(本業でどれだけ現金を稼いだか)です。

  • 営業CFがプラス = 本業でちゃんと現金が入ってきている
  • 「利益は黒字なのに営業CFがマイナス」が続く会社は黄色信号

チェックポイント:

  • 営業CFはプラスか
  • 営業CFと純利益の差が極端に大きくないか

3枚まとめてチェックリスト

最後に、この記事の内容を30秒で使えるチェックリストにまとめます。

  1. 営業利益は黒字で、増えているか(PL)
  2. 自己資本比率は40%前後あるか(BS)
  3. 営業キャッシュフローはプラスか(CF)

この3つをクリアしている会社は、少なくとも「すぐに危なくなる会社」ではありません。逆に1つでも引っかかったら、買う前に理由を調べる——これだけで、雰囲気で買って後悔する投資はかなり減らせます。

決算書はどこで見られる?

  • 会社の公式サイトの「IR情報」ページ(決算短信・決算説明資料)
  • EDINET(金融庁の開示システム)で有価証券報告書
  • 証券会社のアプリでも主要数値は確認できます

まずは自分が持っている(または気になっている)会社の決算短信を1社分、開いてみてください。この記事の3カ所だけ見る、で十分です。

まとめ

  • 個人投資家が見るべき決算書は PL・BS・CF の3枚だけ
  • PLは営業利益、BSは自己資本比率、CFは営業キャッシュフロー
  • 完璧に読める必要はない。「危ない会社を避ける物差し」を持つことが第一歩

次回以降、それぞれの書類の読み方を1枚ずつ掘り下げていきます。

※ 当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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