貸借対照表の見方|危ない会社を見抜く3つのサイン

決算書の読み方

財務三表の入門記事損益計算書編に続く3回目は、貸借対照表(BS)です。

損益計算書が「今年の成績表」なら、貸借対照表は創業からの積み重ねが全部詰まった「健康診断書」。どれだけ儲かっている会社でも、財務がもろければ不況や金利上昇で一気に傾きます。今回は投資家目線で、危ない会社を見抜く3つのサインに絞って解説します。

貸借対照表のつくりは「調達と運用」

  • 右側(負債・純資産): お金をどう集めたか — 借りたお金(負債)と、自分のお金(純資産)
  • 左側(資産): 集めたお金を何に変えたか — 現預金、売掛金、在庫、工場…

右側の「自分のお金の割合」が自己資本比率です。ここまでは復習。ここからが本題です。

サイン1: 自己資本比率が低い、しかも下がり続けている

  • 目安: 40%以上なら優良、10%未満は要警戒(業種差あり。銀行・商社などは低くて普通)
  • 単年の数字より、3年で下がり続けていないかが重要
  • 赤字が続くと純資産が食われて比率が下がる。「利益の出ない会社は、財務から先に壊れる」

私自身、経営の現場で痛感したのは、借入そのものの良し悪しではなく、事業計画に基づいた返済の見通しがあるかどうかが肌だということです。見通しのある借入は成長の燃料になり、見通しのない借入は財務をじわじわ蚀みます。投資家がBSを見るときも同じで、「借金の額」だけでなく「返せる筋道が描けているか」を見てください。

サイン2: 手元の現預金が薄い

会社が倒れる直接の原因は、赤字ではなく現金が尽きることです。

  • BSの現預金と、月々の売上(月商)を比べる。月商の1〜2ヶ月分を切ると資金繰りは綱渡り
  • 有利子負債(借入金・社債)と現預金のバランスも見る。借金が現預金の何倍もあり、利益も細っているなら黄色信号

中小企業の経営に関わって痛感したのは、資金が枯渇して本当に必要になったときには、返済見込みや信用・保証がなければお金は調達できないという現実です。追い込まれてからでは遅い。だからこそ、余裕があるうちの現金確保が極めて大事なのです。手元の現預金が厚い会社は、それだけで生き残る力が違います。

サイン3: 売掛金や在庫が、売上より速く膨らんでいる

これは経理経験者が最も注視するポイントです。

  • 売上が10%しか伸びていないのに、売掛金や在庫が50%増えている——これは危険な兆候
  • 理由①: 押し込み販売(無理な販売で売上を作り、回収できない売掛金が積み上がる)
  • 理由②: 売れない在庫の山(いずれ評価損として利益を直撃する)
  • 理由③: 最悪の場合、架空売上など粉飾の兆候であることも

経理の現場で強く感じてきたのは、売上は「売って終わり」ではないということです。営業担当者の中には、回収まで意識が回っていない人も少なくありません。しかし回収できない売掛金は、督促や債権回収の手間、貸し倒れ損失という大きな「ネガティブコスト」になって跳ね返ってきます。だから実務では、相手の信用を判断してから取引するのが基本です。投資家がBSで売掛金の膨張を警戒するのは、まさにこの「回収できないかもしれない売上」が積み上がっている可能性を疑うからです。

PLの利益がきれいでも、BSは嘘をつくのが難しい。利益と資産の動きがチグハグな会社は疑ってかかるのが鉄則です。

3つのサインまとめてチェック

  1. 自己資本比率は40%前後あるか、下がり続けていないか
  2. 現預金は月商1〜2ヶ月分以上あるか、有利子負債とのバランスは
  3. 売掛金・在庫の伸びが売上の伸びを大きく超えていないか

1つ引っかかったら理由を調べる、2つ以上なら手を出さない——くらいの慎重さでちょうど良いと思います。

まとめ

  • BSは会社の「健康診断書」。儲かっていても財務がもろい会社はある
  • 自己資本比率・現預金の厚み・売掛金と在庫の動き、3点で危ない会社は大半避けられる
  • PLの利益は“化粧”できても、BSまで取り繕うのは難しい

次回は3枚目、キャッシュフロー計算書(CF)——「一番嘘をつけない書類」の読み方です。

※ 当記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました